『爪と目』を読みました。内容も書き方もじわじわ。

『爪と目』藤野可織 新潮社(2013)芥川賞受賞

この作品は、内容はじわじわと怖さがせまる感じで、人称の使い方(書き方)が変わってます。面白くするための工夫自体が、面白い。

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人称とか、語り手・視点のことを、ひと言では言えない作品。

幼女である「わたし」が、「あなたは……」と語っている。
(「あなた」は父親の愛人で、家に入ってくる人)

幼女は知り得ない、大人の世界のことも、自分がいない場所・時のことも語る。

「あなた」だから二人称だってこともなく、一人称っぽくもあれば、全知の語り手の三人称かもしれない。(人称の解説が詳しくできるほど熟練してないので…)

私は、この語りはどの視点?って考えることはあったけど、ストーリーは立ち止まることなくスラスラと読めた。変わった書き方だけど面白かった。

「あなた」は、ヌカかノレンかって感じの人だ。

人生に熱を持っていない感じで、あまり頑張りも努力もせず、手の中に落ちてくるものはちゃんと受け取って、そうやって生きているのが何となくイラッとする。

遮光が原因で、ある植物が枯れてしまった。
「あなた」が「わたし」の人生に登場してから、その脇で「わたし」もどんどん枯れていたのだろう。

「あなた」は不作為という方法で、自分を守るために周りを枯らすのかもしれない。わたしも、わたしの父親も、新しい恋人も、植物も、「あなた」と関わったらみな枯れている。

現実にそういう人はいる。知らんぷり・無関心・無責任…。だけど表面上は上手くやってるような人。

そういうような人のことが書かれていて、幼女はその「あなた」をたんたんと語る。
静かな中でぞくぞくする、個性的な作品。

私はコンタクトをつけたことがないけど、経験者には痛みが伝わってくるのだろうか。視界がぼやけるのもわからない。だけど、目はむき出しの無防備な器官だから、読んでいて痛そうだった。

目は、無責任な「あなた」の弱点なのかな。その無責任・無関心の下で生きている「わたし」は、爪まで噛めなくなってしまって反撃したのだろうか。

双方が、単純な毎日を繰り返す中で、じわじわと煮詰まっていく。

この本には「しょうこさんが忘れていること」「ちびっこ広場」という短編が付いていた。

ちなみに「しょうこさん…」は三人称で、「ちびっこ広場」は一人称。色んな書き方がなされている1冊。

3作ともはっきりした結末では終わらないので、その後は自分で色々考えている。どうなるのかなって。だから、読後にレビューを漁る人も多いんじゃないかな(私も…)。

どれも面白かった。
不思議な話だし、じわじわくる恐怖があるし、書き方面白いし。

●●●(余談)

この本を読んだあと、普通の恋愛小説をよみかけたけど、つまらなくて閉じてしまった。
最近、個性的な作品ばかり読んでいるので、更なる刺激をもとめてしまう。

リハビリしないと。

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