サリンジャー『ライ麦畑でつかまえて』を読みました。

『ライ麦畑でつかまえて』を45歳で初読したので、思い出に記しておきたいです。

40代半ばの初ライ麦は、独身なのにお母ちゃん気分です。息子ホールデンよ、お母ちゃんもこっちから口ばしで突いてあげるから出ておいでとか言ってあげたくなりました。親心。

『ライ麦畑でつかまえて』

J.D.サリンジャー『ライ麦畑でつかまえて』(1984)
白水Uブックス(野崎孝訳)

言わずと知れた名作。

40代になって読んだのは遅かったと感じた。
ホールデン・コールフィールドと近い年齢で読んだら、私はどんな感想を持っただろう。(共感しやすいので、ホールデンが乗り移っていたと思う)

独身の私でも、少々親のような気持ちになりつつも、反面、自分の中にまだ、ホールデンな部分が残ってるんじゃないかと、ちょっと不安にもなった。

イノセンス

イノセンス文学の金字塔とも言われる『ライ麦……』。

「イノセンス」を辞書で調べると、無垢・潔白・無実・無罪など、簡単に説明されているのだけど少々わかりにくい。イノセンスについては芹沢俊介氏が著書でわかりやすく説明されている。『現代〈子ども〉暴力論』など、いくつかの著書に書かれている。

人間は自分の意思で産まれようと思って産まれて来ていないので、自分には「責任がない」というメッセージを秘めている。だけどそれを「責任がある」に自分で書き換えて転換していかないと厳しいらしい。イノセンスは表出されて、解体されなければ成熟した大人になるのが困難で、解体されなかったイノセンスは非行や暴力となるとのことだ。

芹沢氏のイノセンスの概念をふまえて『ライ麦……』を読んでみると、頭でっかちで理想ばかり追い求めて青臭くてウザい感じのホールデンが、大人になる恐怖心の中でもがいている愛らしく弱いホールデンに変わってくる。

イノセンスという言葉は想像以上に深かった。
イノセンスの表出と解体は、大人になるために必要なイニシエーション。

自分を生物的に考えることはほぼないけど、青虫が先端の若葉を目指すように、人間にも組み込まれているものが色々とあるのだろう。

人は、自分のことも他者のことも、自分なりの解釈で理解したがりコントロールしたがるけど、自然に任せておいたらいいって時期も、多々あるのだろうなと思った。

攻殻機動隊とイノセンス

イノセンスという言葉知ったのは、攻殻機動隊シリーズの映画『イノセンス』だ。観た当初はイノセンスの意味などさっぱりわからなかった。正直、今でもこの映画『イノセンス』のどの辺りがイノセンスなのかが、ちょっとわからない。

・バトーの飼い犬のイノセンス?
・素子から少し卒業した方が良さそうなバトーのイノセンス解体?
・人形の中のゴーストのイノセンス?
・イノセンスを突きつけて他者の痛みを考えない子どものイノセンス?

考え出すとキリがないけど、考えるのは面白い。

TV版の『攻殻機動隊STAND ALONE COMPLEX』には「笑い男」というストーリーが出て来る。ファンはよく知っている話だが、『ライ麦……』をほのめかすエピソードがちらちら登場する。

・赤いハンチング帽
・キャッチャーミットの言葉
・FUCK YOUの落書き
・草薙素子の台詞
・秘密の金魚
・トグサが『ライ麦……』の本を手に持っている

など。

そもそも「笑い男」というのがサリンジャーの書いた短編のタイトルで、短編集『ナイン・ストーリーズ』に収録されている。

私は『ライ麦……』を読む前に攻殻機動隊はおよそ観たが、読んだ後はまた改めて、面白く視聴できる。攻殻機動隊はどのストーリーも面白くてたまらないのだが。

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おわりに

『ライ麦……』は、ホールデンと同世代で読むと響くものがあるかもしれないけど、大人になってからイノセンスを踏まえて読むと、人間への理解度が増すような気がした。大人目線で読むのも面白い。

イノセンスは解体されて、子どもから大人へと成熟する。じゃないと、自分の責任として自分の人生を引き受けて生きることが難しい。

生まれようと思って生まれた人は1人もいない。ある時気付いたら、もう生まれていてある程度成長している。こういうところから生物はみなスタートする。

(魂的に、自分の意思で自分で親を選んで生まれてきているという考えもあるけど…)

私はもうとっくに成熟している年齢だけど、なんか自分の中に、ホールデンの影を感じる部分がある。自分の中のホールデンの口にチャックをしつつも、たまには欺瞞に対して口を開きたいと思うこともある。……よくある。

もちろんイノセンスはゼロになるわけではなく……
硬いイノセンスが解体されてほぐれて、他のものもどうぞと、自分の中に別のものを入れられるようになるって感じだろうか。

とても複雑なことのようで、とても単純なことのような気もする。

感想を短くまとめようと思ったのに、またダメだった。

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