岩井志麻子『ぼっけえ、きょうてえ』を読みました。

岩井志麻子『ぼっけえ、きょうてえ』

単行本1999角川書店(文庫本2002角川文庫)
※ 第6回日本ホラー小説大賞受賞作(短編作品で大賞を受賞した傑作)

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ベランダではつか大根を育てる過程で「間引く」ということが出てくる。

せっかく発芽したのに、いくらかを抜いて処分するという行為が、たかだかはつか大根であっても、心苦しいし、もったいないと思う。

だけど、所狭しと並んでいると、全てが上手く育たないのだから「間引く」のは大事な作業なのだということはわかる。

(※ 少しネタバレも含みます)

岡山の遊郭で、女郎さんがお客さんに淡々と語りかける。

岡山弁は、私も毎日使ってる方言だ。
岡山弁はどうも、ヤンキー言葉・年寄り言葉って雰囲気がある。

だけど、この作品の岡山弁は、田舎臭さの中に艶や可愛さを感じる。
地の文が全部「女郎さんのお喋り」という書き方も手伝って、この女郎さんがどんな人なのか、話し方からイメージできて、大変面白い。

子を「間引く」ことが当たり前の時代があった。
子を持つことは、働き手になるかどうか、お金になるかどうかの切実な問題。
生活苦の中での、切実な計算。
避妊もままならない時代。
物悲しい川の流れと、処分される赤ちゃん。

語っている女郎さんの秘密。
読み進めるとだんだん知り得てくる。
怖さもあるけど、興味深い。

かなり深みに引き込まれて、あっという間に押し出される(短編なので)。
不思議な空間を、女郎さんに手を引かれてすっと歩かされた感じだった。

久しぶりに、出会えて嬉しいと思った作品。
岩井先生の著書はいくつか読んだけど、なぜかこの一番の代表作を後回しにしていた。

ホラーって怖いだけじゃなくて、味がある。

短編集なので4作品収録。
「ぼっけぇ、きょうてぇ」「密告函」「あまぞわい」「依って件(くだん)の如し」

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